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火曜日

  • Posted by: nanigashi
  • 2008年10月13日 18:44

よくずる休みをする子供だった。

学校は好きでもないし嫌いでもなかった。
でも、いつも些細なことを憂鬱に思っていた。

例えば、体育の跳び箱だとか、算数の宿題だとか、給食に出てくる揚げパンだとか、
本当は、嫌いなものより好きなものの方がずっと多いはずなのに、
たったひとつの嫌いなもので、その他の好きなものが全部台無しになるんだと、
本気でそう信じていた。

運動会が近づくと、毎日校庭で練習をさせられた。
天気予報を見ながら、雨をふらせてくれるように、毎晩神様にお願いした。
雨が降らないのなら、世界が終わればいいと思っていた。
でも大抵雨は降らなかった。
だから、僕が学校をずる休みする日は、だいたい晴れの日だった。

学校を休むことはそれほど難しくなかった。
仮病は得意だった。

無理矢理咳をしてみたり、
体温計をストーブで暖めてみたり、
虫さされを謎の奇病と言い張ってみたり、
ありとあらゆる手段と手法を駆使して、僕は学校を休んだ。

どうしてあんな子供騙しで大人を騙せると思ったのか、今でも不思議だけど、
僕はバレてないと本気で思っていた。
この程度で同情が買えるのなら、安いものだと思っていた。

母親は、そんな僕の企みを知ってか知らずか、
僕を無理矢理学校に行かせたり、たまに休ませたりした。

見透かされてはいたんだろうと思う。
それでも僕はそれなりに狡猾な子供だったので、
仮病で学校を休んだ日は、終日仮病を徹底した。
テレビゲームは当然我慢した。
本を読んだり、絵を描いたりするぐらいなら、叱られなかった。
それでも、だいたいは布団の中で退屈に過ごした。
忘れないように、たまに無理矢理咳をした。

家で過ごす平日の午前は、まるで別世界だった。

始業の時間が近づくと、通学路から子供たちの声が急に消えた。
ゴミ収集車のヘンなメロディーが、近づいて、止まって、また遠ざかった。
ヘリコプターが上空を通り過ぎると、あたりはさっきよりもっと静かになった。
本当は風邪なんてひいてないから、布団の中は、汗をかくほど暑かった。
まるで本当に風邪をひいたみたいに、頭がボーっとして、気持ちがよかった。
お腹はすいていたけど、あまり食欲があったらおかしいと思って、昼ご飯は少し残した。
3時過ぎにはきっと、木田君か、高橋君が、連絡帳とプリントを持ってやってくるだろう。
そうしたら、明日はきっと学校にも行けるからと、そう言おうと思った。
そんなことを考えているうちに、僕はいつのまにか、眠っていた。
眠りながら、僕は、夢をみていた。

夢の中で、僕はいつの間にか小学校を卒業して、
跳び箱を跳ばなくてもよくなっていた。
算数の宿題は、もっと難しいけれど、もっとおもしろい何か別の宿題になっていた。
揚げパンは、思っていたより不味くなくなっていた。
子供ながらに、それは、素晴らしい夢だと思った。

その素晴らしい夢がいつ覚めたのか、僕は、覚えていない。






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